企業に入社した際に、「企業型確定拠出年金に入りますか?」と聞かれて戸惑った方もいるのではないでしょうか。
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を払い、加入者がそれぞれ運用商品を選び、運用していくものです。
しかし、企業側の説明が十分でないことも多く、今回は企業型確定拠出年金の手続きの詳細を詳しく解説したいと思います。
加入時の手続き
1.運用商品を選ぶ
企業型確定拠出年金では、元本確保型と価格変動型と呼ばれる2つの商品が用意されています。
元本確保型とは、積み立てた元本が確保される商品をいい、具体的には定期預金や保険があります。
一方の価格変動型とは、積み立てた元本が運用によって変動する商品で、投資信託がこれにあたります。
運用がうまくいけば資産が増える可能性がありますが、反対に下がる可能性があることも理解しておきましょう。
2.運用割合を決める
運用する商品を決めた上で、仮に複数の商品を選んだ場合は掛金をどう配分するか運用割合を決めます。
もし運用割合を決めなかった場合、現金で管理されてその間は運用されません。
証券会社によっては、一定期間を経過すると、証券会社が指定した商品で自動的に運用が開始されてしまいます。運用の結果は自分の責任となるため、必ず割合も決めるようにしましょう。
マッチング拠出をする場合
マッチング拠出とは、企業の掛金に上乗せして、加入者自身が掛金を支払うことです。掛金は次のように上限が決められています。
- 企業が払う掛金を超えないこと
- 企業の掛金との合計が法令で決められた限度額までであること
具体的な限度額は下記のとおりです。
- 他の企業年金がある場合 2万7,500円
- 他の企業年金がない場合 5万5,500円
拠出した掛金は、全額所得控除を受けられ、税金負担が軽くなりますので、いくら掛金を拠出するのか、どう配分するのかを決めましょう。
3.書類に記入する
運用商品と運用割合を決めたら、「加入通知書兼運用指図書」に記入します。
具体的な記入箇所は次のとおりです。
- 氏名(通称名は不可)
- 性別や生年月日
- 住所や電話番号
- 掛金の運用割合(運用する商品名と割合を記入します。運用割合は合計で100%になるように注意してください。)
記入した書類は、企業の担当部署へ提出しましょう。
手続きとしては、書類に記入して提出するだけという簡単なものですが、企業型確定拠出年金制度の活用が初めてという方にとっては、何をどう選んだらよいか迷うこともあるかと思いますので、以下の記事をぜひ参照ください。
転職した場合の手続き
転職する前の企業でも年金制度があったという方もいるでしょう。
手続きをすると、これまで積み立てた資産を移すことができます。
ここでは、その場合にどのような手続きをすればよいのかを解説します。
1.担当部署から必要書類をもらう
年金を担当している部署から書類をもらいましょう。
以前、企業型確定拠出年金やiDeCoに加入していたことを伝えるとスムーズです。
2.書類に記入する
「移換届出運用指図書」という書類に記入します。
「積み立てた資産を移します」という書類で、具体的な記入内容は下記のとおりです。
- 通知年月日(書類記入日)
- 氏名(通称名は不可)
- 基礎年金番号
- 異動事由(転職前の企業での年金制度が何だったかを記載します)
- 転職前に加入していた企業型確定拠出年金の事業主情報(転職前の企業の会社名と住所を記入します)
- 移換元の記録関連運営管理機関名(転職前に加入していた企業型確定拠出年金の記録関連運営管理機関名にチェックします。どこかわからない場合は、転職前の担当部署か加入していた企業型確定拠出年金の運営管理機関のコールセンターなどに問い合わせましょう。)
- 移管する資産の運用割合(移管してくる資産をどう配分するかを記入します。)
転職前に加入していた年金制度がiDeCoだった場合、事業主情報以外は上記のとおりです。
また、転職先で新たに企業型確定拠出年金に加入する場合は、先ほど説明した「加入通知書兼運用指図書」も提出する必要があります。
これまで説明した書類や内容はあくまで一般的なものであり、企業によって詳細が異なることがあります。詳しいことは企業の担当部署に確認しましょう。
移換する際の注意点
転職前の企業で積み立てていた資産を移す際、気をつけなければならないことがあります。
①6ヶ月以内に手続きする
転職前の企業で加入していた場合、6ヶ月以内に手続きしましょう。
手続きをしなかった場合、国民年金基金連合会へ自動的に資産が移されてしまいます。税制優遇が受けられないほか、手数料がかかり、資産の運用ができません。転職したらすぐに移換の手続きをしましょう。
②商品の買い替えが必要
転職先の企業型確定拠出年金へ移換をすると、自分が運用したい商品への買い替えが必要です。
移換すると、それまで運用していた資産は一度現金化され、転職先の企業が定める商品に自動的に配分されてしまいます。
自分で商品を選ぶことが企業型確定拠出年金の肝であり、わからないからとそのままにするのではなく納得できる商品を選びましょう。
③同じ商品を運用できるとは限らない
転職後の企業型確定拠出年金の商品は、転職前の企業のラインナップと同じとは限らないことも理解しておきましょう。
運用商品の選定や情報を提供する運営管理機関が転職先と後の企業で同じとは限らないからです。
特に、運用状況がマイナスの場合は移換のタイミングが重要です。
退職してしまうと、別の商品へ切り替えることができなくなってしまいますので、退職前に元本確保型へ切り替えておくと損失の影響がないまま移換できます。
加入前に最低限の知識を学ぼう
企業型確定拠出年金への加入手続き自体はそれほど難しいものではありません。
しかし、資産運用を初めてする方が、運用商品や配分割合を決めるとなると難しく感じてしまうでしょう。
そんなときは、自分1人で決める必要はなく、わからないことは専門家に聞くのが一番です。
当センターでは、企業型確定拠出年金をはじめ、NISAやiDeCoなどの資産運用のサポートをしています。
執筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部