私的年金制度の1つであるiDeCoの利用者は年々増えており、直近では毎月4〜5万人が新規で加入しています。
税優遇などメリットの多いiDeCoですが、実は手数料がかかることを知らない人が少なくありません。
この記事では、iDeCoに加入する前に確認しておきたい各種手数料をテーマに解説します。
加入時にかかる手数料
iDeCoは加入時にも手数料がかかります。
運営管理機関に払う手数料 | 運営管理機関によって異なる |
国民年金基金連合会に払う手数料 | 2,829円/年(※一律) |
運営管理機関
運営管理機関とは、いわば金融機関のことで、それぞれの運営管理機関が手数料を決めています。
手数料は1,800円前後であることが多いものの、無料キャンペーンを実施していることもありさまざまです。
国民年金基金連合会
国民年金基金連合会には、加入時に一律2,829円を支払います。
国民年金基金連合会というのは、iDeCoの実施機関という位置づけで、主に加入資格の確認や掛金の限度額の管理を担う機関です。
なお、この2,829円はiDeCoに加入するときのほか、企業型確定拠出年金(DC)からiDeCoに資産を移換する際にも必要ですので覚えておきましょう。
運用時にかかる手数料
運営管理機関に払う手数料 | 運営管理機関によって異なる |
国民年金基金連合会に払う手数料 | 1,260円(※一律) |
事務委託先金融機関に払う手数料 | 792円(※一律) |
運営管理機関
iDeCoへの加入手続きを済ませ、実際に運用を始めると年間管理費がかかります。
まず、運営管理機関に支払う費用は、加入時と同じく運営管理機関ごとに異なります。
ネット証券のような非対面型の金融機関(運営管理機関)を選ぶと、年間管理費は0円であることが多く、逆に対面型での接客・店舗で窓口を構える金融機関であれば、3,000円程度の手数料が必要です。
対面型の金融機関で年間の管理費を0円にしている場合もありますが、適用には条件があることが多く注意が必要です。
条件の例として、「iDeCoで積み立てたお金の残高が〇万円以上になれば、年間管理費は不要」などといったものがあります。
つまり、iDeCoを利用してから一定期間は手数料を上乗せされる可能性があります。
国民年金基金連合会
iDeCoに掛金を拠出(お金を積み立てている)場合、掛金を拠出するたびに一律105円がかかります。
年額に換算すると、1,260円でこの金額は一律負担する必要があります。
事務委託先金融機関
iDeCo加入者の資産管理といった事務管理業務は信託銀行が担っており、これを事務委託先金融機関といいます。
事務委託先金融機関には、どの信託銀行を選んだとしても毎月66円、年間792円がかかります。
ここまで、運用時の手数料を確認してきましたが、国民年金基金連合会と事務委託先金融機関に支払う手数料は一律であることを考えると、運営管理機関選びが非常に大切であるということがわかります。
運用時にかかる費用は年間2,000円程度〜と、決して高額ではないものの、この費用が10年、20年と継続してかかります。
「小さな違いだし」と侮らず、コストカットできる部分はできるだけ負担せずiDeCoでの積み立てを続けましょう。
新たな掛金を拠出していない時にかかる手数料
iDeCoは原則として毎月、一定の掛金を拠出する(お金を積み立てる)ことを前提としています。
しかし、60歳までの積み立て期間中に、何らかの事情で掛金の拠出が負担になって積み立てを継続できない事態に直面するかもしれません。
このような場合は、運用指図者になり、新たな掛金の拠出をストップできます。
なお、運用指図者になっても過去に積み立てた掛金は運用され、いずれ再び掛金が拠出できるようになれば加入者(掛金を拠出する人)に戻ることが可能です。
運用指図者になると、新たに掛金は拠出していないものの、事務委託先金融機関に支払う月額66円(年792円)と、運営管理機関(手数料は金融機関ごとに異なる)はこれまでと変わらず必要ですので注意しましょう。
給付時にかかる手数料
加入時や運用時の手数料を気にする人が多いものの、実はiDeCoで積み立てたお金を受け取る際にも手数料がかかることは意外と知られていません。
生命保険会社が販売している個人年金保険などは、年金を受け取る際に手数料はかからないため、「お金を受け取るために手数料がかかるなんて」と驚く人もいるかもしれません。
iDeCoの給付時は1回につき440円がかかります。
iDeCoは、年金形式か一時金形式、もしくは年金と一時金の併用(金融機関によっては併用の受け取りができないこともあります)の3パターンから受け取り方法を選択します。
一時金で受け取る場合、受け取り回数は1回ですので、給付時の手数料は440円だけです。
しかし、年金形式や一時金との併用形式で受け取る場合、受け取る回数が多くなればなるほど負担すべき手数料も増えます。
受け取り時は税額控除についても考慮しなければならないものの、手数料負担についても忘れないようにしましょう。
移換時にかかる手数料
移換とは、iDeCoを企業型確定拠出年金に移したり、別の運営管理機関(金融機関)に移すことをいいます。
例えば、iDeCoへの拠出を始めてから転職を理由に、転職先に企業型確定拠出年金に移すケースや、商品ラインナップや手数料を理由に他の運営管理機関(金融機関)が魅力に感じるかもしれません。
iDeCoは移換時にも費用が必要で、金額は運営管理機関ごとに異なります。
運営管理機関の傾向として、先述の運用時にかかる年間手数料を低く設定している金融機関は移換時にかかる費用が安く、逆に年間手数料を安く設定している場合の移換費用は4,000円ほどかかることが多いです。
還付時にかかる手数料
iDeCoにおける還付とは、何等かの事情でiDeCoの掛金を加入者に返すことをいい、還付時は還付金から一律1,048円が差し引かれます。
還付されるケース
・加入者としての資格がない人が拠出した
・国民年金保険料を納付していない月の掛金として拠出した
・限度額を超えて拠出した
還付は珍しいものの、支払った金額のうち1,000円ほどが差し引かれて返ってくることになるため、加入資格や拠出限度額はしっかり確認しましょう。
まとめ
NISAと並んで加入者が増えているiDeCoは、税優遇のメリットを大きく取り上げられることが多いです。
一方、デメリットとして60歳まで引き出せないことにフォーカスした説明・記事が多く、加入時や運用時、受け取り時にかかる手数料には言及していないことが少なくありません。
しかし、iDeCoは60歳までの積み立てであり、人によっては20年、30年と加入するものです。
特に、運用時にかかる費用はできるだけ小さく抑えることで、将来受け取る金額に少なからず差が生じます。
当センターでは、iDeCoの加入をサポートしており、手数料についてもきちんとご説明しています。
iDeCoの概要を理解する上で無視できない手数料は、この機会にぜひ確認しておきましょう。