iDeCo(個人型確定拠出年金)とつみたてNISAは、どちらも税金面での優遇措置がある人気の投資手段です。
しかし、それぞれの制度の違いがよく分からず、「iDeCoとつみたてNISAどっちがいいの?」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
私たちが日頃ご相談をお受けするときにも、「私はつみたてNISAを始めるべきですか?それともiDeCoですか?」「つみたてNISAとiDeCoはどちらが良いのですか?」といった質問を多数頂きます。
そこでこの記事では、両者の違いを「どれだけ税金の負担を抑えることができるか」・「老後資金」・「資産形成」の3つの視点から比較し、それぞれに適した運用方法についても解説します。
iDeCoとNISAは運用目的から比較しよう
iDeCoとつみたてNISAの比較は、まず自分の運用目的や資産形成の目標を明確にすることから始めます。
そこで、iDeCoとつみたてNISAの概要から、それぞれの運用方法を考えてみましょう。
項目 | つみたてNISA | iDeCo |
制度概要 | 年間40万円×最大20年の非課税投資枠を運用できる | 個人で管理・運用する個人年金制度。65歳未満なら誰でも使えるが掛金限度額は働き方で異なる |
税負担の軽減 | 運用益が非課税 | 所得控除あり運用益が非課税 |
掛金限度額 | 年間最大40万円
20年間最大800万円 |
公的年金の被保険者区分や職種によって異なる <1号被保険者> 年額:816,000円 月額:68,000円 <2号被保険者(会社員)> 年額:144,000~276,000円 月額:12,000~23,000円 (企業型年金や厚生年金基金などの加入状況によって異なる) <2号被保険者(公務員)> 年額:144,000円 月額:12,000円 <3号被保険者> 年額:276,000円 月額:23,000円 |
運用可能期間 | 最大20年(新NISA制度開始に伴い2024年以降は買い付け不可) | 65歳未満まで |
運用商品 | 長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF) | iDeCo用の投資信託、定期預金、保険商品、公社債など |
運用方法 | 積立投資(ドルコスト平均法) | 一括投資や積立投資が可能 |
受け取り時期制限 | なし | 原則60歳以降 |
上記の表からも分かる通り、iDeCoとつみたてNISAはどちらも積み立てを目的とした非課税制度ですが、積み立ての目的が異なります。
つみたてNISAは目的を限定していませんが、iDeCoは年金形成(準備)を目的としています。
そのため、つみたてNISAには受け取り時期制限が設けられていませんが、iDeCoは60歳に到達するまで引き出すことができません。
つまり、用途を限定せずに積み立てたいならつみたてNISA、老後資金を目的に積み立てたいなら、60歳まで引き出せないという強制力があるiDeCoが適しているということができるものの、選択肢としてはつみたてNISAかiDeCoのどちらかを選ぶことになります。
新NISA制度が始まる2024年以降は、つみたてNISAでの新規買い付けができません。
現行のつみたてNISA制度を活用して購入済みの商品はそのまま保有し続けられますが、2024年以降に新規買い付けをしたい場合は新NISA制度で購入する必要があります。
このとき、2023年を含むこれまでのつみたてNISAの購入済み額は新NISAの購入額に影響せず、あくまで別制度として管理されます。
なお、iDeCoとNISAはそれぞれ異なる制度ですが併用可能です。
税負担を軽減する効果を最大限活用したいなら、両制度の併用を検討してみましょう。
併用により投資分散ができ、リスクの低減や資産の安定性を高めることも期待できます。
iDeCoとつみたてNISAを3つの視点から比較
iDeCoとつみたてNISAを検討するときに、特に気になるのが「どれだけ税金の負担を抑えることができるか(節税)」・「老後資金」・「資産形成」の3つの視点ではないでしょうか?
ここからは、これら3つの視点からiDeCoとつみたてNISAの具体的な効果を解説します。
iDeCoについて
iDeCoは税金の優遇措置が注目されがちですが、老後資金の貯めやすさや運用方法の自由度の高さも見過ごせません。
また、60歳まで引き出せないことをデメリットと感じている方もいるかもしれませんが、じつはこの点はメリットとしても働きます。
節税
iDeCo最大のメリットは、その高い節税効果にあります。
なかでも掛金(積み立てるお金)の全額所得控除は、所得税と住民税を軽減してくれるため、老後資金の準備と実質的な収入増の両方に効果が見込めます。
個人として税金の負担を抑える方法はさまざまありますが、iDeCoの所得控除についての効果はぜひ知っておきたいものです。
http://nisa-ideco-soudan.ashitaba-mirai.jp/2023/04/13/ideco_merit/
老後資金
iDeCoは、老後資金の積み立てを目的とした制度であり、老後資金の構築に適した商品がラインナップされています。
また、受け取り方は一時金と年金、または両方の併用から選ぶことができるため、老後のライフスタイルに併せて柔軟に対応ができます。(※一時金と年金の併用ができない運営管理機関もあるため注意が必要です。)
また、一見デメリットに感じる「60歳未満での受け取りができない」という特徴は、老後資金を作り育てる「強制力」として働きます。
途中で引き出せるとつい使ってしまう可能性もあるので、老後資金を作り育てるという視点から見ればメリットと考えることができるでしょう。
資産形成
iDeCoは運用商品の選択幅が広く、運用方法の自由度が比較的高いです。
資産を増やすことが目的であれば投資信託、リスクを抑えて資産を保有したいなら国債や保険商品といった選択肢が用意されています。
また、手数料や運用コストが比較的低い商品も多く、長期運用に適しています。
さらに、定期的なリバランス(資産を購入する商品の売却や購入によって資産全体のバランスを調整すること)によってポートフォリオのリスクを調整することも可能です。
つみたてNISAについて
一方、つみたてNISAの着目点は、長期的な非課税運用と自由に引き出せる柔軟性を兼ね備えている点です。
税金の負担を抑えるという節税効果や老後資金を準備する力(60歳まで引き出せない強制力)という意味ではiDeCoにかないませんが、目的を自由に設定できるのは大きなメリットです。
節税
つみたてNISAには、運用益が非課税となる税制優遇制度があります。
しかし、iDeCoのような所得控除制度はありませんので、所得税と住民税の負担を軽くする効果はありません。
ただし、iDeCoが就労状況や職種などにより投資可能額が変動するのに対し、つみたてNISAは制度対象者であれば一律で年間40万円まで利用できるので、多くの方にとって利用しやすい制度といえます。
老後資金
つみたてNISAはiDeCoと異なり、「60歳まで受け取れない」などといった年齢による受け取り制限がありません。
そのため、老後資金を強制的に用意する力は、(iDeCoに比べて)弱いといえます。
また、運用可能期間も最長20年なので、制度を使い始めた年齢によっては60歳まで運用し続けられない可能性があります。
老後資金の準備だけでなく、中長期的な資産形成や子供の教育資金などに目を向ければ、柔軟な資産運用が可能なつみたてNISAは優れているといえますが、老後資金だけに着目するのであればiDeCoの方が優れているといえるでしょう。
資産形成
つみたてNISAで選べる商品は、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、iDeCoより選択の幅が狭いです。
ただ、購入できる商品は金融庁に届け出て、商品リストに登録された「長期・積立・分散投資に適している」と認められた商品に限られるので、投資初心者でも買いやすい商品が揃っています。
また、コツコツと毎月一定額を購入する方法は、長期間投資することでリスクを抑えられるドルコスト平均法が実践でき、値動きによって損をするリスクは比較的低いといえます。
iDeCoとつみたてNISAはどちらも良い制度
冒頭に戻りますが、「iDeCoとつみたてNISAはどちらがいいですか?」とよく聞かれます。
結論としては、どちらも税優遇のある非常に優れた制度で、資産形成を考える上で両制度を積極的に活用したいものです。
そのため、どちらも活用できる人には両制度の活用をおすすめしています。
一方、どちらか一方の制度を選ばなければならない場合、答えは人によって異なります。
iDeCoやつみたてNISAは、始めれば良いというものではなく、資産状況や収入、さらに投資目的(投資によってどんなお金を準備したいのか)といったさまざまな項目を元に考慮せねばなりません。
当センターでは、ご相談者さま1人ひとりに応じて、双方の制度を活用すべきか、どちらか一方にすべきかを面談時のヒアリングをもとにお伝えしています。
iDeCoとつみたてNISAの活用に迷った人は、ぜひ当センターにご相談ください。
執筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部