「公務員は安定している」「公務員なら退職金もしっかり出る」とお考えの方は多いのではないでしょうか。
しかし、現状を見るとそう考えるのは危険かもしれません。
ここ数年、公務員の退職金の支給額は減っている現状を考えると、退職金の他にも老後資金を備える必要があります。
今回は、公務員がiDeCoに加入するメリットを中心に解説します。
公務員を取り巻く現状
公務員は安定した職業というイメージがあるかもしれません。
しかし近年は、退職金の減少や年金制度の改定など、公務員を取り巻く環境が大きく変化しています。
まずは、公務員を取り巻く現状を確認しましょう。
①退職金の減少
退職金額 | |
平成24年(2012年) | 2606万1000円 |
令和3年(2021年) | 2115万6000円 |
表を見るとわかるように、(地方)公務員の退職金は年々減少傾向です。
これは、民間企業に勤める会社員との格差をなくすためであり、確実に退職金は支給されるものの金額は少なくなりつつあります。
退職金だけに頼るのではなく、老後資金を他で備える必要があります。
②年金制度の改定
2015年10月、年金制度が改定されました。
それまで公務員は、共済年金に加入していましたが、会社員が加入する厚生年金に一元化されました。
これも、会社員と公務員の間で差が出ないようにするためです。
共済年金は3階建てで、1階は国民年金(老齢基礎年金)、2階は退職共済年金(老齢厚生年金)、3階は職域加算(企業年金)でした。
共済年金は保険料率も安く、職域加算があったため、民間企業の会社員と比べ、大きく優遇されていたのです。
その職域加算が廃止となり、代わりに「年金払い退職給付」が創られましたが、支給額は職域加算と比べ少なくなっています。
公務員がiDeCoに加入するメリット
退職金以外で公務員が老後資金を用意するのにおすすめの制度がiDeCoです。
iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、自分で掛金を拠出し、運用できます。ここでは、公務員がiDeCoに加入するメリットを見ていきましょう。
メリット1.老後資金を増やせる
iDeCoに加入することで、公的年金に上乗せして、年金を受け取ることができます。
公的年金だけでは不安を感じる方やより豊かな老後生活を目指す方にとって、有効な選択肢です。
長い時間をかけて運用をすることで、複利の力を活用して資産を大きく増やすことも可能です。
ただし、投資にはリスクがあります。自分が許容できるリスクの範囲内で行いましょう。
メリット2.税制優遇を受けられる
公務員に限った話ではありませんが、iDeCoに加入すると3つの税制優遇が受けられます。具体的には次の3つです。
拠出時の所得税控除
iDeCoは拠出した掛金全額、所得控除が受けられます。
運用益の非課税
iDeCoで運用した資産の利益は、非課税となります。
通常、株や投資信託の利益には20.315%の税金がかかりますが、それが一切かかりません。運用時は税金を気にすることなく、効率的な資産形成ができます。
受け取り時の控除
iDeCoは受け取り時にも控除が適用されます。
一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が受けられます。
拠出時から受け取り時まで、継続して税制優遇が受けられる制度はなかなかありません。
積極的に活用し、資産形成をしましょう。
公務員がiDeCoに加入するデメリット
メリットだけでなく、デメリットも理解しておくことが大切です。
デメリットを理解し、メリットを最大限に活用することで、より豊かな将来を築くことができます。
デメリット1.掛金の上限が低い
公務員がiDeCoに加入する際のデメリットとして、掛金の上限が低い点が挙げられます。
現在、公務員の方の掛金の上限額は月額1.2万円(年額14.4万円)です。企業年金がない会社員や専業主婦の方が月額2.3万円(年額27.6万円)となっているのに比べると掛け金の上限は低いです。
しかし、2024年12月から加入要件が緩和され、公務員の掛金上限額が月額2万円(年額24万円)となります。
投資で利益を得るには、長期運用が欠かせません。上限額が上がるのを待つのではなく、「早く始めて長く続ける」ことを意識しましょう。
デメリット2.原則60歳まで引き出せない
iDeCoに加入する際のデメリットの1つとして、原則60歳まで引き出せない点が挙げられます。
老後資金を形成するための制度であるため、特定の条件を満たさない限り、原則として60歳まで引き出すことができません。
教育費や住宅の購入費、リフォーム代など、ある程度時期が決まっているものの資金は、別で用意する必要があります。
iDeCoは公務員の老後資金準備に最適
「安定している」と言われていた公務員ですが、年金制度が改定され、年々退職金は下がり、安定しているとは言えなくなっています。
そんななか、iDeCoには拠出時から受け取り時まで税制上のメリットがあり、老後資金の準備には最適です。
公務員の掛金は少ないですが、2024年の12月からは増額が決まっており、資産形成の後押しとなるでしょう。
当センターではiDeCoをはじめとしたNISAなどの資産形成のサポートをしております。ご質問や不安があれば、お気軽にご相談ください。
執筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部