iDeCoでは自分で資産を運用し、年金を作っていく制度です。
しかし、加入期間中に「新たな拠出が難しい」「家計が安定せず拠出を止めたい」というタイミングが訪れるかもしれません。
今回は、運用指図者とは何なのか、メリットとデメリットを含め解説します。
加入者と運用指図者の2パターンある
iDeCoの加入者とは、掛金を払い、運用をしている方を指します。
一方、iDeCoの運用指図者とは加入者と同様運用はするものの、掛金は支払わない方を指します。
運用指図者になるケース
運用指図者になるケースは、大きく3つあります。
- 定年退職してから受け取りまで空白期間ができる場合
- 掛金を払い続けられない場合
- 運用指図者になることを申し出た場合
1.定年退職してから受け取りまで空白期間ができる場合
iDeCoは原則60歳から受け取れますが、75歳までの間であれば、受け取る時期を自由に選べます。
例えば、会社員や公務員で65歳まで掛金を拠出し、受け取る期間を70歳とした場合、5年間の空白期間ができます。
この空白期間は運用指図者となり、資産の運用のみをおこないます。
2.掛金を払い続けられない場合
収入の減少や失業で掛金を払い続けられない場合も、運用指図者となります。
払うのが難しくなった場合には、加入している運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出しましょう。
また、掛金の支払いを停止するのではなく、減額することも可能です。
3.運用指図者になることを申し出た場合
加入している運営管理機関に運用指図者になることを申し出ることも可能です。
例えば、企業型確定拠出年金年金に加入していて、転職先に同制度がなかった場合、iDeCoへ資産を移すことができます。
この際、運用指図者となって運用を継続できます。
しかし、加入手続きすれば加入者となって掛金を拠出しながら運用も継続できるため、どちらがいいかよく考えたうえで手続きをしましょう。
運用指図者の注意点
運用指図者として運用のみを継続する場合、2つの注意点があります。
注意点1.手数料がかかる
運用指図者は手数料を支払う必要があります。具体的には、資産管理手数料と運営管理機関手数料の2つです。
- 資産管理手数料 :事務委託先金融機関がおこなう積立金の管理などに関する事務手数料(月額66円)
- 運営管理機関手数料:運営管理機関がおこなう運用商品の選定や資産運用に関する資料、情報提供、個人ごとの積立金の記録などに関する事務手数料(※運営管理機関によって異なる)
運営管理機関手数料は、運営管理機関によって異なり、0円としているところもあります。
支払い方法は、年金資産の一部が売却され手数料にあてられます。
時期は金融機関によって異なりますが、1年分を資産からまとめて引き落とすことが多いです。
資産がうまく増えていけば、手数料もさほど気にならないでしょう。
しかし、運用成果が出ていなかった場合、掛金が拠出されてないことから、資産が目減りしてしまう可能性もあります。
できるだけ運用指図者の期間を短くする、もしくはなくすようにするといいでしょう。
注意点2.税制優遇のメリットが小さくなる
iDeCoのメリットとして、拠出時・運用時・受け取り時の3つの時点で税制優遇が受けられる点が挙げられます。
しかし、運用指図者の場合、掛金を支払っていないため拠出時の所得控除が受けられません。(該当する掛け金がありません。)
また、運用指図者の期間は、退職所得控除を計算する際の勤続年数に含まれません。
さらに、掛金を支払っていないことから、資産のリターンも小さくなり、受け取り時の所得控除額も少なくなると考えられます。
税制優遇のメリットを最大限に活かしたいのであれば、加入者を継続するようにしましょう。
運用指図者ではなく加入者でiDeCoを継続するようにしよう
運用指図者は、手数料がかかったり、税制優遇が小さくなったりと、iDeCoのメリットを活かしきれません。
掛金を減らして、加入者としてiDeCoをできるだけ継続するといいでしましょう。
当センターでは、iDeCoをはじめ、NISAや企業型DCなど、資産運用に関するご相談をお受けしています。
独立系FPが、一人ひとりに合った資産づくりをサポートいたしますので、ぜひご相談ください。
執筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部