相談事例

46歳シングルマザー「子供も大切だけど自分の老後も考えたい!」

こんにちは、ファイナンシャルプランナーの舘野です。

ひとり親家庭の方のご相談をお受けするなかで、子供の教育費が最優先なものの、自分自身の老後資金も心配だという声をよく耳にします。

オンラインでの相談を希望された久美さんは、ご自身の老後資金の準備ができていないことについて悩んでいる様子です。

【相談者のプロフィール】 久美さん
46歳女性シングルマザー。神奈川県横浜市在住
年収370万円、預貯金750万円
毎月の平均支出額26万円(家賃7.7万円)
子供1人(16歳・県内の私立高校に通っている)
会計事務所の事務職として勤務

※個人が特定されることを防ぐため、情報を一部改変しています

ご相談内容

 

子供が小さい頃に離婚してから、養育費もなく実家にも頼りづらい中、1人で必死に子供を育ててきました。できるだけ子供が希望する進路を歩ませてあげたいと教育費を優先してきた結果、自分の老後資金の準備ができていないことが悩みです。

 
 
お子様の大学進学が迫っており、教育費をメインに考えることは決して悪いことではありません。
このタイミングできちんと将来に向けたお金作りができれば、教育費と並行して老後資金準備ができますよ。
 

いままでは貯蓄でなんとかなったのですが、やはり大学進学となると必要になるお金がこれまで以上に大きいことはわかります。

ただ、自分の老後についてもそろそろ真剣に準備しなければいけないと想い、何かアドバイスが頂きたいです。

 

固定費の削減は家計への効果大!

 

家計はきちんと管理されている印象ですが、ご自身で何か気になる支出や削れそうな支出は思い当たりますか?

 

 

保険に入りすぎているのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

 

 

加入されている保険証券を確認しました。

どちらかというと保障は手厚いほうですが、久美さんが家計を支えていることと、お子様の大学進学が迫っているタイミングということもあり、あと2~3年はこのまま保障を継続しても良いのではないでしょうか。

 

 

そうですか。つい、固定費を削るとなると保険が浮かぶのですが、適切な保障なのであれば安心しました。

 

 

確かに、相談に来られる方の中には、家計における保険料の支出が大きく膨らんでいる方もいらっしゃいます。

しかし、保険は万が一の際のお守りであり、やみくもに削ることでかえって金銭的な備えを失うといったデメリットにもつながります。

 

 

そうですか。あとはサブスクや通信費は削れるのかもしれません。

雑誌のオンライン購読に申し込んでいるものの忙しくて全く利用していないし、格安SIMへの切り替えが億劫で大手キャリアでの契約を継続したままになっています。

 

 

では、まずそれらの固定費を削りたいですね。

固定費は毎月必ずかかる費用であり、見直しの効果は非常に高いです。

ただし、家計の見直しといっても食費を削ることは極力避けてください。食費の節約は、費用対効果があまり良くなく、心身の不調につながり長続きしません。

 

 

わかりました。子供が高校生なので、食費を削るのはとても難しいと思っています。

贅沢はしていませんが、食費以外の項目で家計の改善を試みたいと思います。

 

教育資金や老後資金といった大きなお金を準備する必要があるとしても、大切なのはまずは家計の整理です。

無駄な支出がないか、削れる固定費はないか、収支のバランスは適切かといった観点から見直しを進めましょう。

見直せる可能性のあるものとして、

  • 保険(生命保険・自動車保険)
  • サブスク(3か月以上使っていないものは解約を検討しましょう。)
  • 通信費
  • 習い事や通信教育

意外と見落としがちなのが、子供の習い事通信教育です。

なんとなく続けているという人も少なくなく、本当に必要なのか今一度確認してメリハリのある家計を心がけたいものです。

税金面での優遇がある制度を最大限活用しよう!

家計改善は、老後資金準備にも役立ちます。

ただ、久美さんは物価が上がっていることも気になっており、福永FPとの会話の中で物価の上昇に伴うお金の価値の変化に気づきます。

物価の上昇=??

 

これまで老後資金の準備ができなかったのは、教育費を優先してきたからとおっしゃっていましたね。

 

 

シングルマザーだからという理由で進学をあきらめたりすることがないよう、子供に関する費用を一番に考えてきました。

 

 

お子様の教育費に目途が立ち始めた一方で、ご自身の老後があと10年ほどというタイミングになり、現実味を帯びてくるようです。

一緒に最適な方法を考えていきましょう。ただ、老後資金を準備する上では物価の上昇も無視できません

 

 

私も物価がじわじわと上がっていることがとても気になります。

このままでは、老後に必要なお金も増えるのでしょうか?

 

 

正確なことはわかりませんが、このまま物価上昇が続けば物の値段も上がり、より多くの老後資金が必要になると予想されます。

ここで大切なのは、物価が上がることに伴って、お金の価値も変化しているという点です。

物価の上昇に伴い、お金の価値は下がります。

例えば、これまで1つ100円だったリンゴが物価の上昇で1つ120円になるとします。

そうなると、これまで100円で1つのリンゴが買えていたにも関わらず、120円を出さないと買えなくなりますよね。これはお金の価値が相対的に下がっていることを意味します。

 

 

物価の上昇ばかりが気になって、その裏側で起きているお金の価値の低下には気づきませんでした。

 

 

つまり、銀行預金という形でおいていると、じわじわとお金の価値が下がります。

大切なのは、物価の上昇に負けないように資産を運用することです。成長資産と呼ばれるものには株や投資信託があり、これらを活用しながら老後資産を準備してみてはどうでしょう?

 

これまでは銀行に預けておくだけで、利息がついてお金が増えていましたが、この超低金利下ではほとんど増えません。

また、物価の上昇を考えると、お金をそのまま置いておくと価値がどんどんと下がっていってしまいます。

そこで、社会情勢や経済情勢次第で価格の上昇が期待できる株式や投資信託での資産運用が大切になってきます。

NISAを利用した積み立て投資が資産運用の第一歩

 

久美さんは、これまで投資のご経験はありますか?

 

 

いえ、まったくありません。”投資”と聞くとお金が減ってしまうのではないか、大きく損をするのではないかというイメージがあります。

 

 

そうですか。投資と似た言葉に投機という言葉があり、これらを混同している人も少なくありません。

投機は短期的な売買で大きな利益をあげようとする、いわばギャンブル要素が強い手法です。

一方、投資は基本的には長期間保有して、資産を運用する方法です。

 

 

私のような投資初心者でも簡単に始められるものなのでしょうか?

 

 

心配ありません。

投資の中でも、NISAを利用しながら長期分散積み立て投資を実践することで、投資リスクをできるだけ小さくしながらお金に働いてもらうことができます。

久美さんはNISA制度については、どの程度ご存じですか?

 

 

銀行の窓口でNISAについて説明を受けた記憶がありますが、正直なところよくわかりません。

 

 

簡単にお伝えすると、本来は投資によって得た利益に約20%の税金が課されますが、NISA制度を利用した投資は非課税です。

利益に税金がかからないという、税金面で優遇措置がある制度で、少しでも効率良く資産を運用するためにもぜひ活用したい制度です。

 

 

私でもいまからNISAを活用した資産運用をしたほうが良いのでしょうか?

 

 

もちろんです!

NISAを利用してコツコツと毎月積み立てを始めれば、久美さんが老後を迎えるときにはある程度の資産を確保することが可能です。

 

 

NISAは、少額投資非課税制度といい、まとまったお金がなくても少額から投資をスタートできます。

その際、投資信託と呼ばれる金融商品を利用することで、運用の専門家が代わりに投資・運用してくれます。

投資信託は、株や債券といったさまざまなジャンルに投資できるため、資産の分散という意味でも大きなメリットがあります。

そして、毎月一定額の投資信託をコツコツと購入し続ける積み立て投資の仕組みでは、投資信託の値段(基準価額)が下がっているときにたくさんの量を買えるため、長期的な目線では市況が悪くてもさほど気にする必要はありません。

NISAを活用した積み立て投資は、一度始めてしまえばあとは毎月自動的に積み立てていくことになり、10年後、20年後にまとまった金額を準備できます。

資産運用と並行してキャリアビジョンを描こう

NISAの概要を理解した上で、老後資金準備のために長期分散積み立て投資を始めようと考える久美さん。

NISAをやっていれば老後も安心なのかと思いきや、ここでFP福永から仕事のことを尋ねられます。

 

ちなみに、久美さんは60歳以降、お仕事はどうされるのですか?

 

 

いまの会計事務所は60歳で一旦定年退職となり、その後数年は再雇用として働けるようです。

その後はパートかアルバイトでもしようかと考えていますが、はっきりとした考えはありません。

 

 

今回のご相談は、老後資金を準備したいというもので、固定費を見直しながらNISAを活用した資産を運用する仕組みを取り入れることは非常に良いと思います。

しかし、女性の平均寿命を考えると、定年後も何らかの形で収入を得ることを意識してみてください。

少額でも良いので、長く働き続けること、そのためにいまから健康に留意して暮らすことで、久美さんのセカンドライフも大きく違ってくるでしょう。

 

繰り返しになりますが、老後に必要なお金は人それぞれ異なります。

だからこそ、しっかりと資産運用でお金に働いてもらう仕組みを取り入れつつ、引き続き収入を得ることもとても大切です。

「定年後は公的年金があるから大丈夫」「NISAで運用しておけば十分だろう」と考えるのではなく、働いてお金を生み出し、そのお金を運用でさらに増やす、この2つのサイクルを上手に回すことで、金銭的な不安を抱くことなくセカンドライフを送ることができるでしょう。

まとめ

今回のご相談は、ご自身の老後資金が心配だという悩みから、家計を見直すとともに、税金面で優遇のあるNISA制度を取り入れた資産運用をご提案しました。

久美さんが、「これまで自分のことを考える余裕がなかったが、徐々に子育ての負担が軽くなってきたこのタイミングで相談できてよかった」とおっしゃっていたのが印象的です。

お子様のことももちろん大切ですが、やはりご自身の老後のことも真剣に考え、きちんと備えておきたいもの。

お金は、毎日の暮らしに密接に関わっているものの、「難しいから」「わからない」「また今度ゆっくり考えよう」などと、家計の見直しや積極的な資産運用は後回しにされがちです。

しかし、昨今の物価上昇を考えると、「子供が独立してから考える」「もう少し収入が上がったタイミングで始めたい」などと、ずるずると資産運用のスタート時期を先延ばしにしているとせっかくの投資機会を失ってしまいます。

当センターでは、久美さんのように「わからないから(NISAなどを活用した)資産運用をしてこなかった」「誰に聞いたらいいのかわからなかった」といった方の、最初の一歩を踏み出すお手伝いをさせて頂いています。

どうぞお気軽にご相談ください。

執筆者:ファイナンシャルプランナー 福永涼子