企業型確定拠出年金を、転職や退職後もそのままにしていると、自動移換されます。
今回は自動移換とは何か、自動移換が行われるとどうなるのかを解説します。
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自動移換とは
自動移換とは、企業型確定拠出年金の資産が、国民年金基金連合会に自動的に移されることです。
退職した翌日の次月から6ヶ月以内に手続きを行わなかった場合に行われます。
ただし、他の企業型確定拠出年金やiDeCoの口座があり、個人情報が一致する場合は、その口座に移換されることがあります。
ここでいう個人情報とは、基礎年金番号、性別、生年月日、カナ氏名のことです。
「結婚・離婚により改姓した」といった事情があれば、この限りではありませんので注意してください。
自動移換されるとどうなる?
自動移換されると、今まで積み立ててきた資産はどうなるのでしょうか?
①売却され現金化される
企業型確定拠出年金で運用していた資産は、全て売却され、現金化されます。
②国民年金基金連合会で管理される
移された資産は、国民年金基金連合会で管理されます。
管理されている間は管理手数料がかかります。
自動移換されることで生じる4つのデメリット
では、自動移換によるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
①運用できない
先述したように、国民年金基金連合会に移換されたときには現金化されているため、運用ができません。
つまり、運用されずに現金として保管されている形となり、物価の上昇によってじわじわと資産の価値が目減りします。
②手数料がかかる
国民年基金連合会に移換されるとき、移換されている間などに各種手数料がかかります。
特定運営管理機関への移換手数料 | 特定運営管理機関に自動移換される際に徴収される手数料 | 3,300円(税込) |
自動移換に関する事務手数料 | 特定運営管理機関に自動移換される際に徴収される事務手数料 | 1,048円(税込) |
特定運営管理機関手数料 | 移換されてから4ヶ月後の末までに手続きがされない場合に徴収される手数料 | 52円(税込)/月 |
なお、特定運営管理手数料は、年に一度、3月末に年度分をまとめて資産から引かれることになります。
自動移換されている間、継続して手数料が引かれるため注意が必要です。
③老齢給付金の加入者期間に含まれない
老齢給付金を受け取るためには、通算して10年以上の加入者期間が必要です。
しかし、自動移換中はこの加入者期間に含まれません。
そのため、老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、自動移換されて10年に満たしてない場合、受け取り開始時期が遅れてしまう可能性があります。
例えば、企業型確定拠出年金に加入して3年ほどで転職し、自動移換されている場合は、加入者期間が10年に達しておらず受け取りが遅れるかもしれません。
④退職所得控除額が減る
自動移換されている間は「退職所得控除」の計算に必要な勤続年数に含まれません。
控除額は勤続年数が長いほど大きくなるため、自動移換されて勤続年数が少なく計算されると、退職所得控除額が減ってしまうことになります。
退職所得控除とは企業型確定拠出年金を一時金として受け取る際に、勤続年数に合わせた控除額を退職金から引く仕組みをいいます。
高額になることも多い退職金に対し、税負担を和らげる狙いがあります。
自動移換されたら早めに手続きしよう
自動移換されてしまうと、運用ができない、手数料がかかる、老齢給付金の加入者期間に含まれないといったデメリットがあります。
手数料はかかりますが、iDeCoや他の企業型確定拠出年金に移換することをすぐに検討・実行してください。
自動移換されている期間が長ければ長いほど、管理手数料が取られ、せっかく積み立てた資産が減ってしまいます。
手続きをすれば再度運用できるため、なるべく早く手続きをして、運用を再開しましょう。
執筆者:NISA・DeCo相談センター編集部