分散投資は、投資におけるリスク管理の有効な手法として広く知られています。
ただ、資産配分や購入方法など、実践方法はいろいろありますが、全体像がよく分からない方もいるのではないでしょうか?
この記事では、分散投資の考え方を基本から体系的に解説します。
分散投資を始める前に知っておきたいこと
分散投資とは、投資ポートフォリオを様々な資産クラスや地域、業種に広げることでリスクを軽減する考え方です。
つまり、1つの投資対象に全てのお金を賭けるのではなく、投資する対象を複数に分けてリスクを分散させます。
例えば、株式投資が不調だったとしても、不動産投資が好調であれば総合的に見て損失を補ってくれる可能性があります。
しかし、分散投資のためには、その基本的な考え方を理解し、適切な戦略を立てることが重要です。
以下に、分散投資を行う際に重要となる考え方をいくつか紹介します。
①複数の資産(商品)を取り入れる
投資をするときは、複数の資産(商品)をバランスよく取り入れましょう。
ここでいう資産(商品)とは株式、債券、現金、不動産、コモディティ(商品)などを指します。
これらの資産(商品)は、市場環境や経済状況によってそれぞれ異なる動きをします。
そのため、複数の資産(商品)に投資をすることで、一部の資産が下落した場合の資産への影響を小さくできる可能性があります。
②さまざまな地域と業種を選ぶ
投資先を決めるときは、投資先の地域や業種が偏らないように気を付けましょう。
投資におけるリスクは地域や業種によっても変わり、特定の地域や業種に投資が集中すると、その地域や業種が直面するリスクに大きく影響を受ける可能性があります。
たとえば、新興国の成長に期待するあまり、新興国にだけ投資をしていると内戦や紛争、政情不安などを理由に思うような利益が得られないこともあるでしょう。
投資先を複数の地域や業種に分散させることは、リスクを抑える上で非常に重要です。
③時間をかけて投資する(ドルコスト平均法)
分散投資の話題になると、必ず出てくるのがドルコスト平均法という手法です。
ドルコスト平均法とは、価格が変動する商品(例:投資信託)を、常に一定の金額で定期的に購入することをいいます。
投資金額(投資する金額)を一定にすると、価格(投資信託であれば基準価額)が低いときには購入できる量(口数)が多く、価格が高いときは購入できる量(口数)が少なくなり、平均購入単価を抑え、平準化することができます。
ドルコスト平均法を実施して投資のタイミングをずらすことは、有効なリスク管理方法です。
そもそも、市場の動向を正確に予測することは非常に難しく、まとめて投資した資産が大きく値を下げることも珍しくありません。
このようなリスク度合いをできるだけ下げるために、一括で手元の全ての資金を投資するのではなく、定期的に一定額を投資するドルコスト平均法が用いられます。
ドルコスト平均法を実践して長期的に購入し続けることで投資コストを平均化し、値動きによる損失リスクを下げる効果が期待できます。
④定期的に見直す
バランスよく資産の組み立てができたとしても、良いバランスはいつまでも続くとは限りません。
例えば、株が非常に値上がりして、資産における金融商品の割合が株に大きく傾くということも考えられます。
そのため、リバランスとよばれる資産配分の定期的な見直しが必要です。
投資開始時に設定した資産のバランスは、各資産(商品)の価格の変動によって当初から変化し、その結果、ご自身のリスク許容度から外れたバランスの資産構成になっているかもしれません。
そのまま放置しておくと分散投資の効果が薄れてしまうので、定期的なリバランスにより、目標としたポートフォリオの構成を保つようにしましょう。
⑤投資目標とリスク許容度を明確化する
投資目標とリスク許容度は、投資を始める前にしっかり設定しておきましょう。
投資目標は、投資によってどういったお金を貯めたいのか、という目的を考える必要があるほか、投資でどれくらいの利益を得たいのかという金額の目標も考えておきたいものです。
これらを明確化しておくことは、商品選びにも役立ちます。
一方のリスク許容度とは、最大どの程度のリスクまでならリスクを取ることができるのか、言い換えると、どれくらいまでならマイナス(損失)になっても受け入れることができるのかの指標です。
リスク許容度は、過去の投資経験だけでなく、年収や資産状況に応じてもさまざまですので、まずは自分自身で「どれくらいの範囲なら投資可能か」という点を明確にしておきましょう。
投資の資産クラスや購入額・購入期間などは個々の目標とリスク許容度によって異なるべきです。
そのため、自身の目標とリスク許容度を理解し、それに基づいた投資戦略を策定することが重要といえるでしょう。
分散投資の実践方法
ここまで分散投資を始める前に確認しておきたいことについて解説してきましたが、分散投資はただ資産を分散させればよいわけではありません。
投資目標やリスク許容度をベースに、具体的な計画と戦略を策定することが求められます。
以下で分散投資を始める際の手順を解説していますので、それぞれのステップごとに読み進めてください。
STEP1. 投資戦略(目的)を決める
分散投資で最初にやるべきことは、自身の投資目標を明確に設定し、それに基づいた投資戦略を決めることです。
投資の目的や目標は、投資の目的やリスク許容度、投資期間などを考慮して作成します。
目的や目標は個々の家庭状況や年収・資産などによって異なるため、自分自身の状況を鑑みて、具体的な計画を練ることが大切です。
組み込む資産(商品)の種類や購入額・購入頻度などに関わる大切な部分ですので、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することも一案です。
STEP2. ポートフォリオを作る
投資戦略(目的)が決定したら、次のステップは具体的な投資ポートフォリオの作成です。
ポートフォリオは、資産の組み合わせであり、これにより投資のリスクとリターンが決まります。
このとき、様々な資産(商品)、地域、業種を含むようにしてください。
なお、ポートフォリオの作るときには商品ごとの特徴を把握する必要があります。
一定の知識が求められる部分なので、無理に自分でやろうとせずに、専門家に相談しながら決めていきましょう。
STEP3. 定期的な投資とリバランス
ポートフォリオを考えたら、定期的に投資を行います。ここは、まさにドルコスト平均法の実践ともいえます。
その後、市場の動きに応じてポートフォリオのリバランスを行います。
リバランスとは、ポートフォリオにおいて値上がったために比率が高くなった資産(商品)を売って、比率が低い資産(商品)を買うことで、資産(商品)の割合を調整することです。
これにより、市場の変動に対応し、当初の投資戦略(目的)に基づいたリスク許容度を維持することが可能です。
リバランスの最適な頻度は、投資の目的や投資期間、リスク許容度、投資対象の具体的な動向などによって影響を受けるため、正解はありません。
ただし、年に1回はリバランスを検討し、ご自身の資産の状況や市況を元に、資産(商品)の配分が適切かチェックすると良いでしょう。
なお、あまりに頻繁にリバランスを行うと、取引費用が増加し、その結果としてリターンが減少する可能性があります。
一方で、リバランスをあまりにも頻繁に行わないと、ポートフォリオが元のリスク許容度や投資目的から外れる可能性がありますので注意してください。
STEP4. 資産状況の確認
投資を始めたら、投資状況を継続的に確認しましょう。
これにより、各資産クラスのパフォーマンスや市場の変動によりポートフォリオのバランスが偏っていないかを確認できます。
ただし、決して毎日チェックする必要はありません。
(長期)分散投資は、繰り返しになりますが、価格が低いときには量(口数)をたくさん買えて、価格が上がれば購入量(口数)は少なくなりますが、結果として資産を押し上げることになります。
毎日の価格に一喜一憂せず、例えば1か月に一度といった頻度できちんと積立が継続されているか確認し、同時に市況の確認の意味を込めて、価格が上がっているのか下がっているのか見ておくと良いでしょう。
分散投資の限界と注意点
分散投資はリスク管理の有効な手段ですが、それでも全てのリスクを排除するわけではありません。
例えば、全世界的な経済危機のような状況では、どのように分散投資を行っていても、ポートフォリオの価値が下落する可能性があります。
また、過度に分散投資を行うと管理が難しくなるだけでなく、各投資のリターンが相殺されて結果的にリターンが小さくなってしまう可能性もあります。
そのため、分散投資を行う際には以下の点には十分注意してください。
投資の質
多くの異なる投資に資金を分けるだけでは分散投資の効果が十分に発揮されない場合があります。
各投資先の商品の中身(運用実績等)にも目を向け、信頼性のある情報源から十分な情報を得てから投資してください。
投資先の理解
投資先の理解が不十分だと、リスク対策の見落としが発生するかもしれません。
どういった種類の商品に投資しているのかということは自分自身でしっかりと確認して、リスクを想定しておくといざというときに慌てずに済みます。
手数料と税金
手数料と税金を考慮しないと、思ったように利益が出ないかもしれません。
投資にかかる手数料を考慮し、税金を差し引いた最終的なリターンをイメージしておくことで、大まかな利益をつかめるでしょう。
分散投資を活用して投資環境の安定化を図ろう
分散投資は、リスクを管理し、資産を長期的に成長させるための重要な手段です。
さまざまな資産(商品)、地域、業種に資金を分散させ、定期的に投資とリバランスを行うことで、市場が抱えるさまざまなリスクを可能な限り低く抑えられます。
しかし、分散投資にも限界はあります。
分散投資を行う際には、投資の質、自身の投資理解、投資に伴う費用と税金などを考慮し、また、全てのリスクを排除するものではないことを理解しましょう。
最近は、NISAやiDeCo、勤務先の確定拠出年金といった国の制度を活用しながら資産を運用する人が増えています。
「分散投資」という言葉だけが先走り、「NISAを始めたら分散投資ができる」などと誤解している人も少なくありません。
当センターでは、分散投資を正しく理解頂き、分散投資を始めるサポートをさせて頂いていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部