NISA加入者が死亡すると、NISA口座で保有している金融商品の取り扱いはどうなるのでしょうか?
この記事では、NISA加入者の死亡時に必要な手続きや必要書類、相続時の注意点などを解説します。
NISA加入者の死亡に関して覚えておきたい4つのこと
NISA加入者が死亡したら、相続の手続きに基づいて、NISA口座で保有している金融商品が相続人に移管されます。
しかし、移管には所定の書類の提出や相続人・相続割合の決定などが必要になり、簡単ではありません。
NISA加入者が亡くなったときの手続きの詳細について、まずは最低限以下の4つを覚えておきましょう。
①非課税口座開設者死亡届出書の提出が必要
NISA加入者が死亡したときには、非課税口座開設者死亡届出書の提出が必要です。
非課税口座開設者死亡届出書とは、NISA口座の開設者が死亡したことを金融機関に知らせる書類であり、書類は口座を保有している金融機関に連絡して送ってもらいます。
非課税口座開設者死亡届出書は、加入者死亡時に必要となるほかの手続き書類と書式を兼ねている場合もあります。
例えば、「相続財産等の処理にかかる届出書」や「特定口座開設者死亡届出書」などと兼ねている場合がありますので、取り寄せ時や記入時に確認すると良いでしょう。
②NISA口座は遺族が引継げない
非課税口座開設者死亡届出書を提出すると、保有商品の引継ぎ手続きが始まりますが、NISA口座をそのまま遺族(他者)が引き継ぐことはできません。
NISAは個人に紐づけられた制度なので、加入者が死亡した時点でストップします。
また、NISA口座にあった金融商品を相続人のNISA口座に移すこともできません。
これは、相続人がすでにNISA口座を保有している場合でも同じです。
③金融商品は相続人のNISA口座以外の口座に移管する
NISA口座に保有していた金融商品を移管できる先は、相続人の「NISA口座以外の口座」、つまり一般口座または特定口座です。
※一般口座とは、自分自身で1年間の譲渡益等を計算して確定申告の準備をする必要があり、一方の特定口座は納税手続きが簡単という違いがあります。
このときの注意点として、移管先を特定口座とする場合は移管元と同じ金融機関でないといけません。
これはどの金融機関でも同じで、口座が無い場合は新たに開設する必要があります。
④一般口座や特定口座がある場合は一緒に手続きする
NISA口座の金融商品を移管するとき、同じ金融機関に一般口座や特定口座がある場合は、それらの口座に保有している金融商品の相続手続きも同時に行います。
なお、一般口座または特定口座に保有していた金融商品を相続人の特定口座に移管する場合も、同じ金融機関でないといけません。
移管先は同一金融機関に限るという制限がある点は、ぜひこの機会に知っておきましょう。
NISA加入者死亡時の移管手続きの手順
金融機関によって多少差はありますが、一般的な手続きは以下の通りです。
- 金融機関に連絡し手続き書類を取り寄せる
- 必要書類を準備する
- 残高証明書の発行を依頼し、相続対象になる金融商品の数量や金額を把握する
- 遺産分割協議または遺言書により相続の割合を決定する
- 書類に相続人全員が署名・押印し、必要書類を添付して提出する
- 必要に応じて修正や不足書類を追加する
- 手続き終了後2~3週間で相続人の口座に移管される
このとき、相続人が相続に使える口座を持っていない場合は事前に用意しておくことはもちろん、特定口座に相続人名義の証券口座がない場合は、あらかじめ被相続人(亡くなった人)と同じ金融機関に口座を開設しておくと手続きがスムーズです。
必要書類一覧
NISA口座の金融商品移管に必要な書類は、一般的に以下の通りです。
- 被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 非課税口座開設者死亡届出書
- 遺言書または遺産分割協議書
遺言書は、遺言書がある場合にのみ用意します。
また、遺産分割協議書は必ず必要ではありませんが、相続人間のトラブルを回避するために用意しておくことをおすすめします。
覚えておきたい税金のルール
手続きのほかに覚えておきたいのが、死亡前後の課税・非課税のルールです。
NISAの非課税制度がどこまで適用され、どこから適用されないのかを理解し、相続後に損しないよう気を付けましょう。
非課税が適用されるのは相続発生前まで
NISA口座内の金融商品から生じた含み益や配当金などが非課税になるのは相続発生前まで、つまり本人が生きている間だけです。
NISA口座の保有者が死亡した場合、NISA口座内の金融商品はその時点で非課税の適用が止まります。
そして、相続発生日、つまり本人の死亡日を取得日として、その日の価値(金額)で移管されます。
ただ、相続発生日までに権利確定している場合は、払い込みが保有者の死後であっても、そこから生じた配当金や分配金は非課税扱いとなります。
金融商品を引き継いだ以後の利益は課税される
死亡した人のNISA口座内の金融商品を、相続人の口座に移動させたあとは、引き継いだ金融商品から発生した売却益や配当金などは課税対象です。
ここで覚えておきたいのが売却益の考え方です。
株式の売却益は譲渡価額(売却金額)から取得費(取得価額)と売却手数料等を差し引いた額をいいます。
相続人の金融商品取得日は相続発生日で、取得費は相続発生日の時価であるため、相続発生日の時価よりも時価が上がっているときに売却すると、売却益が発生する可能性があります。
また、権利確定が相続開始日の翌日以降である配当金や分配金も課税対象です。
また、配当金の注意点として、非課税口座開設者死亡届出書の提出が遅れた場合があり、その間に配当金が非課税で支払われる場合がありますが、この配当金は訴求されて課税されます。
まずは落ち着いてできることから
今回はNISA加入者の死亡時に行うべき手続きや必要書類、注意点などを解説しました。
NISAに加入している人が亡くなると、金融機関への連絡や遺産の相続割合の決定などやることが多く、大変だという印象を持った方は多いのではないでしょうか?
大切な方を亡くした直後では、気持ちも落ち着かないはずです。
そんなときは、あれもこれもと考えるより、ひとまず非課税口座開設者死亡届出書を金融機関から取り寄せるところから始めましょう。
金融機関の担当者に相談しながらゆっくり進めていけば、着実に手続きを進めることができます。
当センターでは、NISAやiDeCo加入者の死亡時の取り扱いなどを含め、制度の概要を基礎からお伝えしています。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部