企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)と中小企業退職金共済(以下、中退共)は、いずれも受け取ったお金を老後の生活に役立てることができます。
しかし、制度の内容は大きく異なり、目的に応じた制度選択が不可欠です。
企業型確定拠出年金と中小企業退職共済についておさらい
企業型DCは、企業が毎月掛金を拠出し、従業員自身が運用して退職金を準備します。
企業型DCには、入社すると自動的に加入する場合と、加入するかどうかを選択できる場合(選択型企業DC)があります。
一方の中退共とは、自力では退職金制度を設けることが難しい中小企業のために、国が制定した制度です。
こちらも企業が掛金を拠出しますが、運用は独立行政法人勤労者退職金共済機構がおこないます。
どちらも企業が掛金を負担する制度ですが、自分で運用を行うのか、機構が主体となって運用するのかが大きな相違点です。
企業型確定拠出年金と中退共の違い
5つのポイントを通して制度の違いを把握しましょう。
相違点①制度を導入できる企業
中退共:条件を満たした企業
企業型DCは企業の裁量で制度が導入されるかどうかが決定されるため、大企業に限らずさまざまな中小企業で導入されています。
一方、中退共は名前に中小企業とあることから、常用従業員数や出資金によって加入できる企業が限られています。
相違点②加入できる人
中退共:経営者や役員は加入できない
企業型DCは、経営者や役員を含めて企業に勤める全員が加入できますが、中退共は経営者や役員は加入できません。
また、中退共は、その企業に勤める全員の加入が原則とされていますが、使用期間中の方や労働時間が短い方、雇用期間が定まっている方などは対象外とすることができます。
相違点③掛金の上限
※確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金を併用している場合は、月額2万7500円まで
中退共:月額3万円まで
どちらも掛金は企業が拠出しますが、上限額が異なります。
また企業型DCは、従業員が一定の条件で掛金を上乗せできるマッチング拠出を設けることができます。
一方、中退共は5,000円~3万円の範囲内で16通りあります。また、パートタイマーなど短時間労働者は、特例として2,000円から加入できます。
なお、企業型DCは確定給付企業年金や厚生年金基金を併用している場合、上限は月額2万7500円までとなるため、注意しましょう。
相違点④受け取れる金額
企業型DCは、運用成果に応じて受け取れる金額が変わります。
つまり、運用する商品によって、元本割れを起こす可能性もあることを覚えておきましょう。
しかし、運用次第では大きな成果をあげる可能性もあります。
運用結果やリスクに対する責任は自分自身にあるため、慎重に判断しましょう。
一方、中退共はあらかじめ受け取れる金額が決まっています。
掛金の金額と納付年数に応じた金額が支給され、支給額の詳細は独立行政法人勤労者退職金共済機構のホームページで、退職金のシミュレーションができます。
また、運用状況によって付加退職金が上乗せされますが、令和5年度の支給率は0となっています。
相違点⑤税制上の優遇
企業型DCは、運用時と受給時で2つの税制上の優遇があります。
通常、株式や債券などに投資して得た利益には20.315%の税金がかかりますが、企業型DCは非課税です。
また給付時は、年金として受け取った場合には公的年金等控除、一時金として受け取った場合には退職所得控除が適用される点が特徴です。
一方、中退共は、年金で受け取る際には公的年金等控除、一時金で受け取る際には退職所得控除が適用され、受給時には税優遇を受けられる点を覚えておきましょう。
制度を活用して老後に備えよう
企業型DC、中退共ともに、掛金は企業が負担します。しかし、掛金の上限や運用、税制の優遇などで大きく違いがあります。
いずれも老後の資産形成に役立つもので、確認の上、制度をうまく活用しましょう。
「転職するときはどうなるの?」「掛金はいくらにしたらいい?」といった疑問があれば、当センターまでご相談ください。
最適な老後資金準備方法を一緒に考えましょう。