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iDeCoとNISAの違い、正しく理解していますか?

iDeCoとNISAは、老後資金の形成や将来の資産形成を目的として活用できる制度です。

どちらも税制優遇が受けられますが、どちらを選ぶべきか悩む人も多いでしょう。

この記事では、iDeCoとNISAの違いを投資と税金の視点から比較し、それぞれどのような特徴があるかを解説します。

iDeCoとつみたてNISAはどっちがいい?iDeCoとつみたてNISAはどちらが良いんだろうと悩む人は多く、制度の活用を考える際にはそれぞれの制度の特徴を踏まえた上で判断しなければなりません。この記事では、iDeCoとつみたてNISAについて改めて解説した上で、選択時のポイントをお伝えします。...

制度目的から見るiDeCoとNISAの特徴

iDeCoとNISAは、それぞれ制度目的が異なり、運用機関や購入可能な商品などが異なります。

iDeCo 一般NISA つみたてNISA
運用目的 老後の資金形成を目指す 個別の投資目標に合わせた運用が可能 資産形成を主な目的に、個別の目標に合わせた運用が可能
投資方法 毎月一定額を拠出する 自由なタイミングに自由な額を購入可能 毎月一定額を拠出する
運用期間 20歳から最大65歳まで ※1 最大5年(18歳以上) 最大20年(18歳以上)
投資可能額 1万2,000~6万8,000円/月

(国民年金の被保険者区分や就労状況によって異なる)

年間120万円(合計600万円)

※2

年間40万円(合計800万円)

※2

購入可能商品 iDeCo用の投資信託、定期預金、保険商品、公社債など 国内外株式やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など) 長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)

※1 第2号被保険者の場合は20歳未満でも拠出可能です。60歳以上65歳未満で拠出可能なのは、第2号被保険者に該当する場合か、第1号被保険者及び第3号被保険者が任意継続をしている場合に限ります。

※2 2024年から新NISA制度がスタートするため、一般NISA・つみたてNISAで商品を購入できる期間は2023年末までです。

iDeCoは、老後の安定した生活資金を確保することを目的として設計された制度で、最長65歳までの長期運用により、リスクを抑えつつ着実な資産形成を目指します。

一方、NISAは少額の非課税投資を目的としており、短期~中期投資に対応した一般NISAと、積み立て投資に対応したつみたてNISAの2種類から選ぶことで、柔軟な資産運用が可能です。

投資視点からのiDeCoとNISAの比較

iDeCo NISA つみたてNISA
投資の自由度 限定的(金融庁が認定した商品のみ) 高い(株式、投資信託等多数の選択肢) 限定的(積み立てに適した一定の商品に限る)
リスクとリターン 保守的な運用を目指す 積極的な投資戦略やリターンの追求 保守的な運用を目指す
運用戦略 年金としての受給を目指す 個別の投資目標に合わせた運用 中長期的な資産形成を目指す
集中投資 制限される 可能 制限される

上記の表からも分かる通り、(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)は、それぞれ異なる特性と特徴を持っています。

それぞれの制度の特性について深く掘り下げ、投資の自由度、リスクとリターン、運用方法、集中投資の4つの観点から比較を行います。

①投資の自由度

iDeCo

iDeCoの投資の自由度は比較的限定的です。

金融庁が認定した適格商品の中から選ぶ必要があり、具体的には、iDeCo用の投資信託、定期預金、保険商品、公社債など、リスクが比較的低い、老後資金の構築に適した商品で構成されています。

一般NISA

一般NISAの場合、投資対象となる商品は非常に多岐にわたります。

株式や投資信託、ETF(上場投資信託)など、自分自身のリスク許容度と投資目標に応じて幅広く選ぶことができます。

つみたてNISA

つみたてNISAは、対象商品がiDeCoと似ており、積み立てに適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されています。

②リスクとリターン

iDeCo

iDeCoは、将来の収入を確保するための年金制度であるため、適格商品はリスクを分散させる目的で構成されており、リターンは安定したものを期待することができます。

一般NISA

一般NISAは自由な投資が可能であるため、リターンとリスクのバランスは各個人の投資戦略に大きく左右されます。

積極的な投資戦略を採ることで高いリターンを狙うことが可能ですが、同時にリスクも高まる可能性があります。

つみたてNISA

つみたてNISAは、積み立てを目的とした制度であるため、前提として商品がリスクが抑えられたものに限定されています。

そのため、比較的低いリスクで運用できますが高いリターンを狙うことはできません。

③運用戦略

iDeCo

iDeCoの運用戦略は、将来的な年金受給を目指します。

そのため、安定的な運用と長期的な視点が求められます。資金の引き出しは原則60歳以降となるため、運用期間は自然と長くなります。

一般NISA

NISAの運用戦略は個々の投資目標に合わせて自由に設定することができます。

短期的なトレードから長期的な保有まで、自分自身の投資スタイルに合わせた運用が可能です。

つみたてNISA

つみたてNISAの運用戦略は、最長20年という中長期的な運用を目的としたものですが、iDeCoと違って引き出し制限がないため、iDeCoより自由度の高い運用が可能です。

④集中投資

iDeCo

iDeCoは、適格商品への投資となるため、一定のリスク分散が行われて集中投資は制限されます。

一般NISA

NISAでは、自己の判断で集中投資を行うことも可能です。特定の企業や業種にポジションを集中させることで、その領域のパフォーマンスに大きく依存する投資戦略を採ることができます。

ただし、集中投資はリスクも高まるため、リスク管理には注意が必要です。

つみたてNISA

つみたてNISAは、中長期的な資産形成を目的としているため、iDeCoと同様にリスク分散のために集中投資は制限されます。

税金視点からのiDeCoとNISAの比較

ここからは、税金視点からiDeCoとNISAを見ていきましょう。

今回は、所得控除制度、受け取り時の税金、そして長期的な資産形成に向くかどうか、という3つの観点から比較します。

iDeCo NISA つみたてNISA
所得控除制度 掛金の全額所得控除 なし なし
受け取り時の税金 受給時の所得税として課税 非課税期間内であればなし 非課税期間内であればなし
長期的な資産形成に向くか 向く(最長65歳になるまで運用が可能) 向かない(運用期間が最大5年のため) 向く(最大20年の長期運用が可能)

所得控除制度

iDeCo

iDeCoは、積立額が所得から控除されるため、節税効果が期待できます。

所得控除は所得税と住民税を同時に減らす効果があり、特に累進課税である所得税においては、大きな効果を発揮する可能性があります。

控除対象となるのは、掛金を拠出した年の所得であるため、拠出した翌年には効果を実感できる、即効性のある制度となっています。

一般NISA及びつみたてNISA

一般NISAとつみたてNISAには所得控除はありません。

受け取り時の税金

iDeCo

iDeCoの場合、基本的に60歳になるまで受け取りを開始することはできません。

そして、60歳以降に年金として支給される際、その受給額の一部が所得として課税されます。

具体的には、一時金で受け取った場合は、収入額から「退職金所得控除」を差し引いたあとに2分の1を乗じた額が課税対象となり、年金として受け取った場合は、収入額から「公的年金等控除額」を差し引いたあとの額が課税対象です。

なお、退職金として受け取った場合は分離課税が適用され、年金として受け取った場合は総合課税が適用されます。

iDeCoの受け取り方については以下の記事で詳しく解説していますので、今回の記事と併せてご確認ください。

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一般NISA及びつみたてNISA

一般NISAとつみたてNISAの場合は、非課税期間中であれば、運用益や売却益に対して税金はかかりません。

ただし、課税口座に移管した場合や、受け取り方を、証券会社の取引口座で受け取る「株式数比例配分方式」にしなかった場合には課税されるので注意しましょう。

長期的な資産形成に向くか

iDeCo

iDeCoは積立型の運用なので、長期的な資産形成に向いています。

毎年一定額を積み立てることで、長期的に資産を増やすことが可能です。さらに、所得控除の恩恵を受けられるため、所得が一定以上の人には特に有利です。

一般NISA

一般NISAは運用期間が最長で5年であるため長期的な資産形成には不向きといえます。

ただし、5年の運用期間が終了したあとも、ロールオーバー制度を使えばさらに5年間の非課税運用が可能です。

NISA口座の非課税期間が終了したあとに、金融商品を翌年の非課税投資枠へ移管することをロールオーバーといいます。

ただし、2024年から新NISA制度に変わることに伴い、現行のNISA制度は非課税期間終了後にロールオーバーはできなくなりますので注意が必要です。

つみたてNISA

つみたてNISAは、最長20年の非課税運用により、コツコツと資産を増やすことができます。

また、購入可能商品が金融庁が認定した商品に限定されているため、比較的リスクを抑えられるのもポイントです。

それぞれの違いを理解して最適な制度運用を

iDeCoやNISAの活用を検討する際には、自身の投資目標やライフプランに合わせた選択をすることが重要です。将来の安定と資産形成を考えた上で、慎重な判断が必要です。

また、iDeCoとNISAは併用が可能です。両制度とも高い節税効果があるため、積極的な資産運用をしたい場合は、併用を検討してみましょう。

当センターでは、ご相談者さま1人ひとりに応じて資産運用のアドバイスをお伝えしており、NISAやiDeCoといった税金の優遇措置のある制度を活用した資産づくりをサポートしています。

ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者:NISA・iDeCo相談センター編集部